通常、姿勢は私たちの日常生活の中で、特に意識する事なく、また努力する事なく保たれています。
しかし一方で、肩凝りや腰痛をお持ちの方、お悩みの方は、常日頃、姿勢を気にされているかもしれません。
今回はパーソナルジムや整体などで改善したいランキング上位の姿勢について少し考えてみたいと思います。
〜姿勢のコントロール〜
歩いているときや、デスクワークをしている時、洗い物をしている時など、私たちの姿勢は、脳によって無意識的にコントロールされています。
一方、パーソナルジムやピラティススタジオなどで『もう少し背を高く保ちましょう』とか『胸を張りましょう』とかアドバイスを受け、姿勢を整える場合には、意識的に姿勢を変える事もできます。
人が姿勢をコントロールする種類として
①意識的な姿勢の制御
②無意識的な姿勢の制御
③予測的な姿勢の制御
④CPG(Central Pattern Generator)で作られたパターンによって自動的に制御された姿勢
この4つによって、私たちの姿勢はコントロールされています。
意識的な姿勢の制御
例えば、号令に合わせて「気をつけ」の姿勢を取ったり、他者の指導によって背筋を伸ばす、胸を張るといった、自らの意志によって姿勢をコントロールする場合は、意識的に姿勢を制御することができます。
意志によって、大脳皮質から「背筋を伸ばして胸を張る」といった指令によって、筋肉へ指令を送り、その指令に沿った姿勢を作り出します。そして足底の感覚や筋肉、関節、視覚、前庭覚からのフィードバックを受けてその姿勢を微調整します。
しかし、日常生活やスポーツ活動では、できれば前頭葉やその他の感覚器は他のことに注力させたいですよね。
例えば、サッカーで自分がボールをキープしている状況では、相手や味方の選手がどこにいるのかを把握するために使いたい。そのため、適切な姿勢を無意識的に制御できていた方が良いということです。
無意識的な姿勢の制御
無意識的な姿勢の制御とは、中枢神経系の脳幹などによって姿勢を制御するシステムになります。体幹や四肢の抗重力筋を働かせたり、過剰に働いている筋群を抑制したりして姿勢をコントロールしています。
過度なストレスや、長時間のデスクワークやスマートフォンの操作、または怠惰な日常生活を送っていると、脳の機能低下が起こり、姿勢を制御するシステムへも影響を及ぼします。
適度に休憩を取って体を動かしたり、普段は行わないような活動(例えば非利き手で字を書くとか)で、脳へ刺激を加えることで、脳幹へも刺激が送られ、姿勢をコントロールする機能も活性化します。
姿勢を維持するためのフィードバックとして、足底からの感覚が70%、前庭覚(バランス感覚)が20%、視覚が10%と言われています。それぞれの感覚入力が上手く入ってきて、脳で感覚情報が統合されていれば問題ありませんが、この感覚統合が上手くいかないと、姿勢を保つ筋肉の緊張が強くなったり、ひどい場合はめまいなどの症状が出る可能性もあります。
皮膚や筋骨格系からの感覚や、前庭覚、視覚のトレーニングを行うことで、これらの感覚のズレを修正し、上手く統合できるようにすることも姿勢や筋肉の過緊張の改善にとても重要です。
予測的な姿勢の制御
例えば、重い箱を持ち上げようと思っていたのに、実際は軽かったといった経験はないでしょうか?
この時、自分で予想していたよりも、その箱を高く持ち上げてしまったかと思いますが、これは中枢神経系が、この運動課題に対して必要な力をあらかじめプログラムしていた為と考えられます。
脳は、過去に持ち上げた似たような状況の経験を基礎にして、その運動課題を行うのに必要な、動作や出力を事前に調整しています。
過去の経験に基づいて、姿勢や動作がプログラミングされていますので、例えば、腰に負担がかかる動作を習得してしまっている場合、同じような動作で痛める可能性が高くなります。ですので、腰痛を何度も繰り返している場合は、負担がかからない動作を覚える必要があるかもしれません。
パターン化された動作の姿勢制御
最後にパターン化された姿勢の制御です。CPG (Central Pattern Generator)とは、脳からの信号がなくてもリズミカルな運動、例えば歩行や呼吸を自動的に制御できる神経ネットワークのこと。このCPGで作られた動作パターンによる姿勢制御です。
CPGは特に脊髄に存在し、歩行や他のリズム運動に重要な役割を果たしています。CPGが正常に働けば、神経系が自律的に歩行のパターンを生成してくれる。しかし、CPGだけでは、正確な動作は行えず、ここでも筋骨格系や関節、皮膚などからの感覚フィードバックが、CPGの出力を調整しています。
〜姿勢を改善するために〜
他人からのフィードバックや徒手的な介入は、意識的な姿勢の制御による改善である事が多いため、意識をしていないとその姿勢が保てないということになります。
理想的な姿勢とは、効率よく力が発揮できる姿勢であり、できる限りエネルギーをつかわずに保てる姿勢ともいえます。つまり、その時々によって、また何をするかによって理想的な姿勢は常に変化します。
よって他人からの指示や徒手的な操作により見た目だけ綺麗な姿勢を作っているのと、自由に脊柱を曲げたり反らせたり、捻ったりをコンロール出来る中で、自然に理想的な脊柱のアライメントを保っているのでは大きな違いがあります。
無意識的に適切な姿勢がコントロールされていると、効率よく腕や脚が力を発揮できるようになり、筋力が上がったり、反応速度が上がったりする。つまりパフォーマンスの向上にも大きなメリットとなります。
そして脳も姿勢以外にリソースを割けるので、周囲の情報確認や、様々な思考をめぐらせることができるのです。
一流のアスリートの姿勢や動作フォームが、とても綺麗でかっこよく見えるのは、その時々で、適切な姿勢を保てている証ではないでしょうか。
無意識的な姿勢制御を変えるためには、呼吸の適正化や段階的な脊柱、胸郭のエクササイズ、脳の活性化など包括的に介入する必要があります。
次回は具体的に姿勢を改善する方法を見ていきましょう!!
